Why Now · Vision
AI時代に、リーダーの「器」が問われる。
効率も、分析も、答えを出す速さも、これからはAIのほうが上です。経営者の手元に残るのは、AIには引き受けられない仕事です。正解のない状況で決め、異なる立場の人と組み、まだ言葉にならない未来に賭けること。
それを左右するのは、知識やスキルの量ではありません。世界をどう捉えるかという、認識の幅です。私たちはそれを「器」と呼びます。問題は、この器が、本人の優秀さや努力とは別のところで育ちにくくなっていることです。なぜそう言えるのか。順を追ってお話しします。
01 · 器が育ちにくい構造
器は、違う世界に触れて初めて更新される。
ところが日本の組織は、世界でも稀なほど同質的で、閉じています。次の3つの国際指標は、一見べつべつの問題に見えて、実は同じ一つの構造、すなわち「越境の不在」を別の角度から映したものです。
ジェンダーギャップ指数
118/ 148
意思決定の場が、似た属性の人で占められている。
管理職の女性比率は約12%(OECD平均40%)。経済・政治の分野で、先進国の最低水準。
出典:WEF Global Gender Gap Report 2025
若年層の登用
121/ 約140
世代間の摩擦が起きず、前提が問い直されない。
管理職の平均年齢は48.6歳。30歳未満の管理職比率は3.2%(OECDでは10〜20%)。
出典:厚生労働省 / WEF, 2024
若者の未来への希望
15.6%
変えられる実感を持てないまま、次の世代が育つ。
「自国の将来は良くなる」と答えた18歳の割合。中国85.0%・インド78.3%などに大きく離され、6カ国で最下位。「自分の行動で社会を変えられる」も最下位。
出典:日本財団「18歳意識調査」第78回(2026)
似た人が、似た前提で、外の声に触れぬまま決め続ける。私たちの判断は、その環境のなかで形づくられています。やっかいなのは、それが内側からは見えないことです。立場が上がるほど、自分の前提を映し返してくれる相手は減っていきます。
02 · なぜ研修では変わらないのか
器は、足し算では広がらない。
この構造への一般的な対処は、「学びを足す」ことです。研修を増やし、知識を仕入れる。けれど、それで動くのは器ではありません。成人発達理論(監修:成人発達学者 加藤 洋平)は、大人の成長を2種類に分けて整理します。知識やスキルが増える水平の発達と、世界の捉え方そのものが変わる垂直の発達。
AIが一気に押し上げたのは、水平のほうです。だからこそ、経営者に問われているのは垂直、つまり器そのものの成長です。そして垂直の発達は、情報をいくら足しても起きません。鍵は、無意識に握っていた前提を「外から眺められる対象」に変えること。発達理論が核に置く転換です。
その転換は、自分とまったく違う世界に触れ、自分の当たり前を映し返されたときに起こります。これが、越境が器を育てる、確かな方法だと言える理由です。
縦軸 × 横軸で、いまの自分のポジションを捉える。AIが押し上げるのは「横」、TBJが育てるのは「縦」。
03 · だからTBJは、越境を設計する
偶然に任せず、越境を「起こす」。
越境は、海外に行けば自動的に起きるものではありません。TBJは、前提が揺さぶられる確率が最も高くなるように、場を設計します。6カ国の実践者=生きた叡智との対話、経営者と多世代の仲間が同じ問いに向き合う構造、成人発達理論に基づく全10回・4ヶ月の連続体験。研修ではなく、原体験として。その設計を貫くのが、次の3つの原則です。
Borderless
違う世界を、同じ部屋に。
6カ国の実践者と、経営者から学生までの多世代が同じ問いに向き合う。前提が揺さぶられる確率を、設計で最大化する。
Connection
一度きりで、終わらせない。
4ヶ月の連続体験と、その後も続く関係。揺らぎを一過性にせず、判断の軸として定着させる。
Ecosystem
次の世代へ、回していく。
経営者の参加が、選抜学生の越境を支える原資になる。所有ではなく循環の中で、視座は社会へひらく。
04 · 経営に、何が返るか
器の広がりは、抽象論ではない。
器が広がると、それは日々の経営に、具体的な違いとして表れます。不確実な状況でも、軸を持って決められるようになる。世代や国籍の違うメンバーを、一つのチームとして率いられるようになる。そして、自社にとっての「豊かさ」や成功を、より広い物差しで捉え直せるようになる(9つの資本、エゴからエコへ)。下にまとめたのは、その変化を経営者個人と社会の両面から整理したものです。
経営者個人に返るもの
- 不確実な状況で、軸を持って決められる
- 世代・国境を越えて、チームを率いる感覚
- 「豊かさ」を測り直すモノサシ(9つの資本)
- 肩書きを脱いだ、一生モノの仲間
その先に、社会へ広がるもの
- ダイバーシティを、知識でなく実感で扱う人が増える
- 若い世代が、意思決定の中心に立つ
- 国際的な批判精神と、多角的な視点
- 越境する個人が、組織と日本の変化の起点に
一人の経営者の内側で起きた変化は、やがて組織を、そして次の世代を動かす出発点になります。AIに任せられることが増えるほど、人にしか担えない判断の重みは増していく。その判断を支える器を、4ヶ月でどこまで広げられるか。TBJは、その問いに本気で向き合う場です。
Supervisor's Message
監修者からのメッセージ
日本にいながら、世界を越える成長を。

Supervisor
加藤 洋平 Yohei Kato
成人発達学者 / オランダ・フローニンゲン在住 / プログラム監修
成人発達学者の加藤洋平です。このたび、Smoooth 株式会社 代表取締役の久手堅 和瑚さんと協働し、世界の最前線で活躍する 10 名の実践者をお招きした越境プログラムを開講することになりました。
人は誰しも、自分だけの「見え方」「前提」「価値観」を持っています。それはこれまで育ってきた環境の中で形づくられた、大切な認識の枠組みです。しかし、人生のある段階に来ると、こう思う瞬間があります。「もっと広い視点で世界を見たい」「今の枠の外にも、自分の可能性があるのではないか」。
成人発達理論では、この瞬間は次の発達段階へ踏み出す扉となります。その扉を開く 1 つの大切な鍵が、越境体験です。越境とは、国境を越えるだけではありません。異なる文化、世代、価値観、人との関わりを通じて、自分の前提がゆるみ、より広い世界の見方が生まれる体験です。
The Borderless Journey は、「日本にいながら越境できる場」として設計されました。海外に行かなくても、認識の幅は広がります。本プログラムでは、異なる視点を生きてきた登壇者の方々と出会い、対話し、自分の価値観に光を当てていきます。講義ではなく、問いを交わす学びです。
正解を探すのではなく、「自分はなぜそう思うのか」「他の世界の見方はどんな景色なのか」。その問いかけと対話を通じて、価値観がほどけ、再構築されていきます。
私はこの一年間、プログラム開発に携わりながら、この場には「段階の移行を支える力」があると実感しています。外の世界に触れ、自分の内側が動き、今の自分とこれからの自分が静かに入れ替わっていく瞬間が生まれることを期待しています。
今回のテーマは「越境」。越境は、才能ではなく心の在り方です。一歩踏み出すだけで見える世界が変わります。そして世界が変わると、人生が動き始めます。
この場で、皆さんの次の成長段階への扉を、一緒に開いていきませんか。若い世代の挑戦を応援したいという想いが込められています。この場が、皆さんの次の一歩を支える実りある時間になることを願っています。
加藤 洋平(成人発達学者・プログラム監修)
